収穫を待つあんずとポプラの木。
ラダック地方は見どころが満載だ。インダス川沿いのゴンパを巡るにも、じっくり見学させてもらってチベット仏教と文化に浸りたいし、険しい山々と自然の中に溶け込むにも、数日じゃ満足できない。トレッキングするなら夏中滞在したいものだ。
・・・そんな勝手なことは言ってられない。人気のある場所は、パンゴン・ツォ、ツォ・モリリといった下インダス方面にある湖や、上インダス方面では月面に降り立つかのような絶景ラマユルを目指した、ゴンパ巡りといったところか。
キルギスのイシククルに始まり、どうやら湖フェチなわたしである。しかも高地好き。どちらも4000メートルの高地にあるパンゴン・ツォとツォ・モリリ、どちらも行かねばならぬ!でも2歳児を連れ回しての旅、どちらにしようか迷いまくって出かけたのが・・・
ええ〜い、ツォ・モリリ!(湖畔の村、カルゾクで泊めてもらったお宅の窓から見える湖)
塩の湖だ。水中に生き物はいないらしい。こんな高地に、乾いた場所に、青く透き通った湖があるなんて、まるで違う惑星にきたみたいな感覚になる。強い風と光、険しい岩山に映る雲の影をずっと眺めても飽きなかった(息子は飽きたが)。
あの壮大さと美しさは写真にはとうていおさめられない!(我ながら、写真センスのなさにがっくりする。でもこころにたくさん焼き付けといた!)
カルゾクには、思ったよりたくさんのホームステイができるお宅がある。
わたしと息子が押し掛けたのが、カルゾクのゴンパでドライバーとして働いている男性の実家。到着すると、バター茶であたたかく迎えてくれた。
赤いバケツに井戸水がためられている。この水を大切に使う。電気は、日が暮れてからの4時間しか使えない。バケツの右にある、筒みたいな道具でバター茶を作る。
大切な水を、なみなみ注いでお奉りする。祭壇のろうそくが電気がくるまでの灯りなのに、「はっぴいばーすでい」といってろうそくを吹き消してしまった息子・・・。申し訳ない。
食材も限られるのに、おかゆとキャベツとじゃがいもカレーをたくさん作ってくれた。アマレー(お母さん)のやさしいごはんがほっと染みておいしかった。8月の終わりなのに、夜はもう冷え込んでいて、寝袋にもぐりこんだ。これからもっと寒くなるだろう。この果ての土地で生活するひとたちの、自然にある強さを思った。
ナイスなタルマス。
さて、ツォ・モリリに決めたのには、いくつか理由がある。パンゴンツォに行くには、往復路同じ道を行くしかないけれど、ツォ・モリリは往復別の道がある。どちらも絶景を行くけれど、せっかくなら違う景色をみたかったのと、ツォ・モリリ道には温泉があり、ゴンパがあり、チベット人だけの村があり、ツォ・カルとタツアンツォという2つの湖があり・・・ほかにも見どころがありそうだったからだ(かの有名なマナリ・レーロードを行くことができます)。それにパンゴンツォより人が少ない。
これがチュマタン温泉。源泉が湧き出ていて、宿泊施設もある。
ヤク!
パシュミナたち!
ツルもいるそうだ!ワイルドフラワーに喜び、マーモットに興奮し、羊の群れに叫び、息子とふたり、道中ずっと楽しんだ。楽しみすぎて、往路では軽い高山病になってしまったほど。
帰路、ツォ・カルに向う道は、ずっと続けば良いのに・・・というくらい夢見心地な道だった。息子が眠ってくれたおかげで、数時間もの思いにふけることができたのも良かった。これまた美しいタクラン峠を越えるときは、地球万歳、人生って最高!と言いたくなるくらいのハイテンションだった。トレッキングやキャンプをしている集団も多かったし、険しいながらもゆったりと進めるのが魅力的だと思う。
ツォ・モリリ、大好きな場所になった。8時間弱のバンピーロード、ずっと息子を抱きかかえて、車酔いするし高山病になるし・・・正直ハードな旅だけど(一番大変なのはドライバーさんかもね)できることなら何度でも訪ねたい。来た道を何度も振り返っては、こんな道を通りすぎたんだ、とため息をついた。もう二度とこんな大変な道は通りたくない、すごいところまで来たんだなあ、と思った。でも前をみると、もっともっと遠くまで行ってみたいという気持ちになる。息子の頭が揺さぶられ過ぎないように、しっかり抱きしめながら、なんだか人生みたいだなあ、と思った。
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