あの山を越えると、パキスタン。
そう、40年前までパキスタン領だった場所がある。バルティスタンだ。ラダック地方にあるとはいえ、Turtuk村は住民はイスラム教徒で、言葉も変わる。2010年に外国人の訪問が許された、という意味で「最果ての村」と言われている。
ディスキット村からまたまた4、5時間。火星のような山をいくつも越えて、インド軍の検問も越えて、ものものしい谷間を過ぎると、そこに穏やかな村がある。
そば畑。シャヨク川に向って、なだらかな斜面が続いている。きれいな小川にお花畑。こんなところでのんびりいつまでも過ごしていたら、世の中で起きている様々なことなんて、どうでもよくなってしまうなあ・・・。
とはいえ、ヌブラ谷一帯がインド軍の最前線であることを忘れてはいけない。
そば粉で作ったチャパティ、というよりパンケーキ!とってもおいしかった。
村の路地。おとぎの国に迷い込んだよう。
モチーフがかわいすぎるカーペット。洗濯代わりにするから、ほしい、ほしい、ほしい!
まちから歩くこと30分。山の上にゴンパがある。インド軍が攻め入った後、軍人が建てたのだそうだ。静かに村を見守るようにあるゴンパを、イスラム教徒である村人が管理している。ともに生きるって、こういうことだと思う。異なる言葉や思想や文化や生活が、寄り添っている。
どこまでも青い空。
村長的な方に、村の博物館を案内してもらった。自身もバルティスタン王家の末裔で、印パ分離のせいで、家族親戚と離ればなれになってしまったという。
山の向こうの親戚とは、もう会うことができないという。携帯電話で(!)話をするくらいそうだ。空はこんなにも広くつながっているのに。
インドという国にありながら、ラダック地方に属しながら、言葉も文化も民族も違うこのやさしい村で、いったい異邦人のじぶんがどの場所にいるのかわからなくなった。最果て、なんていうけど、世界に果てなんてないって思った。せめてこの村のひとたちが、自由に家族親戚友だちと会うことができる世界になりますように。願わずにはいられない。